ベンガラとは?吹屋の赤い町並みと工芸を彩った顔料の歴史

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ベンガラとは?吹屋の赤い町並みと工芸を彩った顔料の歴史

赤褐色の顔料「ベンガラ」は建築、陶磁器、漆器など日本の暮らしと工芸を広く彩ってきました。岡山県・吹屋で発展した弁柄産業と、現在も残る赤い町並みの歴史を解説します。

資料・研究ベース

弁柄は原料、粒子、焼成、精製、配合、塗布する素材などによって色調が変化するため、歴史的な弁柄を単一のカラーコードに固定しない。

古い町家の格子、陶磁器の赤絵、漆器など、日本の建築や工芸には落ち着いた赤褐色がたびたび現れます。その色を支えてきた代表的な顔料の一つが「弁柄(ベンガラ)」です。植物から色素を取り出す藍染や紅花染とは異なり、弁柄は鉄を含む材料から作られる赤色顔料です。なかでも岡山県高梁市の吹屋は、江戸時代から弁柄の生産で栄えた地域として知られています。

ベンガラとはどのような顔料か

弁柄は酸化鉄を主成分とする赤系の顔料で、赤から赤褐色にかけての落ち着いた色調を持ちます。高梁市の資料によると、吹屋では銅山から得られた硫化鉄鉱石を原料とし、そこから取り出した緑礬を焼成し、洗浄や粉砕、乾燥などの工程を経て弁柄を作っていました。

染料が繊維の内部へ色素を定着させるのに対し、顔料は細かな粒子として材料の表面を彩る用途に広く使われます。弁柄は色彩だけでなく、建築や工芸などさまざまな分野で利用されたことで、日本の景観にも大きな痕跡を残しました。

吹屋で弁柄産業が発展した理由

岡山県高梁市の吹屋は、もともと銅山の町として発展しました。その地域で江戸時代中期から弁柄の製造が始まり、やがて銅と並ぶ重要な産業へ成長します。

高梁市によれば、吹屋産の弁柄は全国へ流通し、陶磁器、漆器、建築など幅広い用途で使用されました。高品質な赤色顔料を生産する技術が地域経済を支え、その富を背景に町家が建てられ、現在まで続く独特の町並みが形成されていきます。

陶磁器・漆器・建築を彩った赤

吹屋弁柄の用途は一分野に限られません。高梁市の日本遺産ストーリーでは、九谷焼や伊万里焼などの陶磁器、輪島塗や山中塗などの漆器に弁柄が使われてきたことが紹介されています。また建築の塗装や船舶の防腐塗料などにも利用されました。

つまり弁柄の赤は、鑑賞用の絵だけに存在した色ではありません。器、漆器、住宅、格子など、生活の中で目にする多くの物を彩る実用的な顔料でした。日本の伝統色を理解する際、衣服を染める染料だけでなく、建築や工芸を彩った顔料を見ることも重要です。

吹屋の「赤い町並み」はなぜ生まれたのか

弁柄産業で栄えた吹屋では、商人たちが町家を整備し、弁柄で彩られた格子や赤褐色の建築景観が形成されました。高梁市は、この統一感のある赤い町並みを吹屋の大きな文化的特徴として紹介しています。

ここでは「色」が建物一軒の装飾ではなく、町全体の印象を作っています。産地で作られた顔料が地域の建物にも使われ、その景観自体が産業の歴史を伝えるようになった点は、色文化を考えるうえで非常に興味深い例です。

明治時代にも評価された吹屋弁柄

吹屋の弁柄産業は江戸時代だけのものではありません。高梁市の資料によれば、1877年に開催された第1回内国勧業博覧会で吹屋弁柄は一等褒状を受け、その品質と知名度を高めました。

江戸から明治へ社会が大きく変わる中でも、弁柄は伝統工芸や建築に必要な顔料として流通しました。その後、産業構造や製造方法の変化によって吹屋での伝統的な弁柄製造は終わりますが、町には弁柄産業の痕跡が残されています。

弁柄色という伝統色

色しるべには「弁柄色」が日本の伝統色として登録されています。弁柄顔料を思わせる暗い黄みの赤、赤褐色の色名です。鮮やかな朱や紅とは異なり、土や鉄を感じさせる落ち着いた色調が特徴です。

ただし、本物の弁柄顔料が常に一つの色になるわけではありません。原料や粒子、焼成、配合、塗る素材などによって実際の発色は変化します。現代のカラーコードとして示される弁柄色は比較のための代表値であり、歴史上使われたすべての弁柄を一つの数値に固定するものではありません。

現在まで受け継がれる「ジャパンレッド」

吹屋の弁柄と銅の歴史は、2020年に「『ジャパンレッド』発祥の地―弁柄と銅の町・備中吹屋―」として日本遺産に認定されました。現在も赤い町並みや旧工場などを通して、弁柄産業の歴史を知ることができます。

ベンガラの歴史から見えてくるのは、色が単なる見た目ではなく、鉱山、製造業、商業、工芸、建築、町並みまでを結びつける存在だったことです。弁柄色を一つの赤褐色として見るだけでなく、その背後にある産業と土地の歴史までたどると、日本の赤の文化がより立体的に見えてきます。

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出典・確認情報

補助確認:高梁市「日本遺産 『ジャパンレッド』発祥の地―弁柄と銅の町・備中吹屋―」、色しるべ「弁柄色」公開ページ。